社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 その日、珍しく母親がいる日に将臣は猫屋敷に来ていた。

 居間でソファに座っていると、猫が入れかわり立ちかわり、膝や肩に乗ってくる。

 猫たちを無意識のうちに撫でながら、将臣は思っていた。

 いや、ライバルが減ったところで、俺がしっかりしないと、話進まないよな。

 そう思う将臣に、早百合は遠慮なく訊いてくる。

「将臣、式場は決まったの?」

 うっ。

 そんな息子の顔を見て、さすが、すべてを察したらしい母は言う。

「あの子はあんたの見てくれにも金にも興味なさそうだものね」

「……どうしたらいいと思う?」

 この親に訊きたくはなかったが。
 朴念仁(ぼくねんじん)なうえに、恋愛経験のない自分にはよくわからない。

 どうしたら、千景は俺の方を振り向いてくれるのか?