社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「何故お逃げになるのでしょう。
 わたくしに送ってくださった写真の目には、確かにハートがあったのにっ」

 だからあれ、ライト……と苦笑いする千景の前で、真実が拳を作る。

「わたくし、絶対、八十島様と恋に落ちてみせますわっ」

「が、頑張ってね」
と千景が見送ろうとしたとき、振り向いた真実が千景たちを見て微笑んだ。

「千景さんにお似合いの素敵な方ですわね」
「え?」

 真実は将臣に近づくと、彼を見上げて言う。

「何処のどなたか存じませんが。
 千景さんと並んでいると、一枚の絵のようで素敵ですわ。

 千景さんはとてもいい方です。
 千景さんをよろしくお願いいたしますね」

 真実は将臣に頭を下げたあと、八十島を追いかけ、行ってしまった。

 社長とお似合いかどうかはともかく……。

 真実さん、私のこと、そんな風に言ってくれてありがとう。

 千景は真実のやさしい気遣いに感謝する。

 でもあの……、この人はあなたの許嫁なんですが……。