社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

『八十島様、素敵な朝ですね。
 今日も元気に働いてらっしゃいますか?

 私は新鮮な朝の空気を吸いながら、今、ビルがたくさんある通りを歩いています』

『八十島様、今日も朝食はカフェですか?
 私もいつかご一緒したいです。

 私は今、焼き立てパンの香りを嗅ぎながら、立ち止まっています』

 カフェの前にある小洒落た手描きのモーニングメニューの看板には、焼き立てパン、と書かれている。

 そこでまた、キンコーンとメッセージが入ってきた。

『そういえば、さっき、ジャージで走るカップルを見ました。
 ああいうのも素敵ですね。

 私は、今、何処かの雑居ビルとビルの隙間の細い道に……』

 何処かって、そこだろっ、と八十島は真後ろのビルの隙間を見たあとで、社長を置いて逃げ出した。

「あ、待ってください。
 八十島様っ」
と真実がビルの陰から飛び出してくる。