社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「痩せないでくださいっ。
 私はそのままの武者小路さんが好きですっ」

「……は?」

 坂巻は、言ってしまったっ、という感じで赤くなっているが。

 いやいや。
 お前、菓子と出世しそうなイケメンと噂話にしか興味のない女じゃなかったのか、と武者小路は思っていた。

 自分を好きだとかまったく信じられなかった。

「痩せるなとか言われたら、痩せたくなるな」

 そっけなくそう言ったが、坂巻は拳を作り、
「じゃあ、二人で痩せましょうっ?」
と必死に言ってくる。