社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 お前に似合う男になるように――

「………………

 ………………

 …………痩せようかなと」

 そんな自分の迷いをたっぷり含んだセリフを聞いて、千景は苦笑いしている。

「あの、よくわかりませんが。
 ものすごい嫌そうですね、痩せるの」

 こいつのために痩せたいとか思う自分が嫌だし。

 痩せるために節制するのも嫌なんだよな。

 そう思ったとき、階段に、
「痩せないでっ」
という声が響いた。

 下を見ると、坂巻が何処からともなく飛び出してきていた。