社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




「あ、八十島さん。
 見つかった? あの景品の残り」

 急ぎ足で廊下を歩いていた八十島は、通りかかった早蕨に声をかけられる。

「いえ。
 すみません。

 ……もうちょっとあとで。

 その、十五分くらいあとで……」

 八十島は千景と二人きりの空間に耐えきれず、結局、なにも探さないまま、倉庫を出てしまっていた。