社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 将臣は、何故かちょっと赤くなり、
「でもまあ、家族って感じじゃないよな。
 お互いの家も見てないし」
と言い出した。

 何故、今、家の話。

 あまり話がつながっていない気がするんだが、と思いながらも、

「あ、じゃあ、ここから近いですし。
 うち、見ます?」
と軽く千景は言った。

 ちょうど仏が一冊、完成に近づいてきていたので、誰かに見せたかったのだ。

 えっ? と将臣は驚いた顔をする。

 いや、拍子抜けした顔とでも言うか――。

 そして、身を乗り出し、訊いてきた。

「行ってもいいのかっ?
 って、もしや、外からお前のアパートを眺めるだけなのか?
 あの『ヘブンズハ』の外からっ」

「ヘブンズハウスですよ」

 ははは、と笑いながら千景は言ったが、将臣は何故か嬉しそうだった。

 今日は社長の言動がいろいろと不思議すぎる、と思いながらも、猫と美味しい寿司と酒で機嫌が良くなっていた千景は、将臣に言った。

「ちょうど仏ができそうなので、社長にもお見せしたいんです」