社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「そうだ。
 お前、秘書から予約されてたじゃないか。

 早蕨さんが手ぐすね引いて待ってるぞ。
 早蕨さんがお前の何処を買って、秘書室に来いと言っているのかはわからないが……」
と呟く将臣は、

 仕事の能力ではないんじゃないかな、という顔をしていた。

 まあそうであったとしても、誰かに必要とされるのは嬉しい。

 千景は妄想の中で、チリトリとホウキを隅のロッカーに片付け、鼻歌混じりに階段を上がっていった。

 いや、秘書室はかなりの高層階にあるのだが……。

 結構呑んでいるのに、酔ってはいない感じの将臣が咳払いし、
「まあ……そうなると、俺ともいつも近くにいる感じになるけどな」
と言った。

「あー、そういえば、そうですね~」

 はは、と笑いながら言ってしまって、

「……嫌なのか」
と睨まれる。