社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「お前だとはまだ割れていないようだが。
 社長が頻繁に若い女と出社して。
 なんかコソコソしていると」

 ……コソコソしてるのは、お互い遅刻しそうだからですよ。

「それは困りましたね。
 でもまあ、私もそうそう遅刻しないと思うので。

 もう一緒に出社するとかないと思いますよ」
と千景は笑ったが。

 入社してから買った写仏の本はまだ何十ページもあった。

「あ……」

 千景は、あ、そういえば、と朝、将臣にかかってきた電話の話をしかけてやめた。

 誰だったのか気になるけど。
 八十島さんに知られたくない電話とかだったら悪いしな、と思ったからだ。

 あ? と八十島が千景を見る。

「ああいえ。
 なんでもありません」
と千景は微笑んだ。