社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「誰が恋人がいるかいないか、載せると声をかけやすいと言ってましたよ」

「どんな出会い系社内報だ。

 っていうか、知らない間に、自分の恋愛事情が社内報に載ってるとか。
 産業スパイのデスクはココ、とか載ってるとか。

 どんな恐怖新聞だ」

 っていうか、まず、今の社史を全力で作ってから考えろっ、ともっともなことを言われてしまった。

「そうでしたね」
と言いながら、千景は鞄をゴソゴソとする。

「そういえば、社長にアンケートを持っていけと坂巻さんが」

「アンケート?」

「新社長へのアンケートです」

「この間答えたろ」

「いや、ああいう新社長になって語る抱負みたいなのじゃなくて。
 社員から、新社長へのアンケートです」
と言うと、将臣はちょっと真面目な顔になった。

「そうか。
 まだまだ俺も社長に就任したばかり、気を引き締めて、社員たちの期待に応えねばな。

 みんな若造な俺に不安も感じるだろうから。
 厳しい問いかけもあるだろうが」

「そうですね。
 社長がまだ若いところはみなさん、気になってはいるようですよ。

 社長に問い(ただ)したいこと、という項目は支社のみなさんも、ビッシリ書き込んでらっしゃいました」

 そう千景はアンケートに目を通しながら頷く。

「よし、言え」
と身構えるように腕組みした将臣に言われ、千景は、はい、と特に多かった質問を読み上げた。