社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「社長が今日新幹線で出張されたことを知っているってことは、今日も一緒だったんだろ」

 今日社長に同行したのは俺じゃない、と八十島は言う。

「俺より古くから秘書室にいる早蕨(さわらび)さんだ。
 新しく秘書に来た春木(はるき)を連れていった。
 ビシバシ鍛えるために」

「……それ、社長も一緒にビシバシされてませんかね?」

 緊張して新幹線に乗る若手秘書と将臣の姿が頭に浮かんだ。

 かもな、と八十島は言ったあとで、
「だが、この間の差し入れが効いて、早蕨さんの社長への当たりは今、ちょっと柔らかくなっている」
と言う。

 まだ見ぬ早蕨さんは女性秘書なのだろうか?
 まあ、男の人でもスイーツ好きの人、結構いるけど。

 ただ、早蕨さんの話をするとき、八十島さんでさえ、妙な緊張感があるから、女性で切れ者な先輩なのかもしれないな、と千景は思った。

「いや待て。
 社長が鍛えられる話をしてたんじゃなかったろ」
と八十島が話を戻す。

「お前、社長と頻繁に出社するから、噂になってるぞ」

「ええっ?」