社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


 社長にタクシー代を払わねば。

 なんか気がつけば、いつも払ってくれてるし。

 いやまあ、その代わり、毎度、タクシー乗っ取られてるんだけど、と思いながら、千景は資料を見ながらパソコンに打ちんでいた。

 あの電話、誰からだったんだろ。

 相手は女性のようだったけど。

 甲高く早口な女の声が漏れ聞こえていた。

 っていうか、高笑いも聞こえてたけど、一体、誰なんだ……と思いながら、カチャカチャ、キーボードを叩いていた千景は、ふう、とひとつ息をつく。

 よし、休憩するか、と立ち上がろうとして、背後に誰か立っていることに気がついた。

「八十島さんっ」

「三行目、『つ』が大文字になってる」

 ひっ、そこからずっと見てたんですかっ、と思いながらも、ありがとうございますっ、と千景は慌てて直す。

「何故、ここに……。
 あの、今日は、社長と新幹線で何処かに行かれたんじゃなかったんですか?」

「やっぱりお前か」

「は?」