社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「気をつけろよ」
とそっけない感じだが、いい声が耳元でした。

 えっ? と顔を上げると、武者小路が自分を抱き止めてくれていた。

 そっと床に下ろされる。

 そのまま、のっしのっし歩いていってしまった。

「あ……ありがとうございますっ」
とこちらを見もしない武者小路に頭を下げる。

 今の感触。
 子どものとき大事にしてたクマさんみたいだった……。

 そう思いながら、坂巻はいつまでも武者小路を見送っていた。