社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「な……なになになにっ、今のっ」

 ヒソヒソ話をするように、律子は身を乗り出したが、その声は大きく、なにもヒソヒソしてはいなかった。

「やだ、あの子、あんたに気があるんじゃないっ?
 今、あんたが会社変わる話したから、驚いたんじゃない?

 お姉様好きとかっ?」

「やだーっ。
 そうかしらっ」

 ふふふ……と律子は笑い、
「若い子もいいわねえ~」
と言う。

 さっきの人、とって喰われそうだ……と千景とたまたま近くにいた同期の吉峰が青くなる。

「あんた……、あそこの男どもと同じこと言ってるわよ」

 可愛い新入社員を囲んで、まだ騒いでいる窓際の男たちを見ながら、坂巻が呟いていた。