社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「大丈夫よ。
 中身どんなんでも、会社変われば、なんか新鮮な人が来たと思われるわよ」

「えっ?」

「転校生と一緒でさ。
 ほら、転校生ってなんか人気じゃん」

「でもそれ、ただし、イケメンと美女に限る、よ」

 そう坂巻が言ったあとで、みんな、ん? と振り返った。

 今、律子と坂巻の会話の間に、別の人の声が入った気がしたからだ。

 声がした方を振り向くと、一段高くなっている通路に紙コップを手にした男が立っていた。

 作業用ジャンパーを羽織っている。

 技術系の人のようだ。

 高校生のような可愛らしい顔をしている。

 彼は律子と目が合うと、赤くなって俯いた。

「おい、小田ー」
と前を行く先輩に呼ばれ、

「はいっ」
と慌てて走っていっていた。