社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「……残念ながら、社内回って、資料やアンケートを集めています」

 坂巻が、
「社長と頻繁にタクシー出社して。
 社長の愛人だと思われてるからでしょう?」
と言い出し、律子が、そうだ、と手を打った。

「あんたのあまりの色気のなさに、すっかり忘れてたけど。

 あんた、社長の愛人だとか。
 猫泥棒だとか噂立ってたわよね」

「……泥棒猫ですよ。
 いえ、猫泥棒の方がなんかいい感じですが」

 っていうか、泥棒はしてませんよ。
 眺めてるだけです。

 猫屋敷の猫たちも、野良猫も、と千景が思ったとき、八十島が通りかかった。