社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


 その日、千景はタクシードライバーと助手席に座った将臣のトークを黙って聞いていた。

 八十島の待つ(?)カフェの前で降りる。

 先に降りていた将臣を見上げ、千景は訊いてみた。

「社長、今度から別々に行きますか?」

 ひとりで前に座るとか。
 私と一緒に乗りたくないのかな、と思ったのだ。

「いや……そうじゃない。
 そうじゃないんだ……」
と言っただけで、将臣は多くを語らない。

 千景は、将臣が自分のことを意識しはじめたことを知らなかった。