社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




「もしや、この子が最後の一匹ですかっ?」

 そう笑顔で千景に振り向かれた将臣はフリーズしていた。

 なんで満面の笑みだ。
 実はお前、俺の嫁になりたかったのか?

 いや、これは単に新しい猫に会えて嬉しいだけなんだろうな。

 というかそもそも、

 ……この猫はうちの猫ではない。

 その愛らしいブチ猫は、何処からかやってきた、見知らぬ猫だった。

 だが、千景は嬉しそうに、これが自分が嫁になる呪いの猫かと訊いている。

 いや、千景自身がそういう訊き方をしてきたわけではなかったのだが……。

 もうこれをうちの最後の一匹だということにしてしまおうか。

 あいつ、千景がいるときに、なかなか出てこないからかな。

 ……だが、家に入った途端、ホンモノの最後の一匹が、ひょいと顔を出してくるかもしれん。

 あいつら、ほんとに気まぐれだから。