社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 将臣がケーキの箱を持ってくれ、千景たちは小百合の屋敷の庭を歩いていた。

 門が閉まっていたので、門の前でタクシーを降りたからだ。

「夜風も気持ちいいし。
 散歩するのにちょうどいい気候ですね」

 緑あふれる春の庭園で、夜の散歩。

 ケーキもあるし、猫も待ってるし。
 最高だなっ、と機嫌良く歩いていた千景の視界の隅をなにかが横切った。

 ちょっとふわっとした毛並みの白黒ブチの猫だ。

 何故、自宅に噴水があるのかわからないが。
 小百合の家の庭には美術館の庭園にありそうな噴水があった。

 白い女神像が抱えた壺から水が流れ落ちている。

 ヒョイと噴水の縁に飛び乗った猫は身を乗り出し、溜まった水を舐めていた。

 こ、このブチちゃんは見たことないっ。

「もしや、この子が最後の一匹ですかっ?」