社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「でもまあ、お菓子の件に関しては、私のおかげというより、八十島さんのおかげですよね。

 ちょっと得体が知れませんが、仕事熱心で、会社のことを一番に考えてるいい人ですよね」

「仕事熱心で、会社のことを一番に考えているから、俺を排除したいんだろうよ」
と窓の外を見ながら捨て鉢に言う将臣に千景は言った。

「排除したいとかじゃないと思いますよ。

 いきなり、社長になるとか。
 この若造め、お手並み拝見、と思ってるだけだと思いますよ」

「……誰がこの若造だ」
と睨まれたが、

「いえいえ、今のは八十島さんの心の声ですよ」
と弁解する。

 八十島が聞いていたら、
「それ、お前の妄想の中の俺だろうがっ」

 俺は言ってないっ、とキレられていたかもしれないが。

「俺も、あいつの仕事ぶりは認めてるんだ。

 ……だから、あいつに認められていない現状が悔しいだけだ」
という将臣の横顔を見て、千景は、ちょっと笑ってしまった。

 なんだ? と睨まれる。

 実は、ちょっぴり可愛らしいなと思ってしまっていたのだが。

 口に出すと、呑みに誘われるより、もっと恐ろしい目にあいそうなので黙っていた。