社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 っていうか、見たくないものは見えなくなるのなら。

 そのうち、私も見えなくなってしまったりしないだろうかと思い、つい、将臣に手を振ってみた。

 空いているデスクの前に立つ将臣は、
「なんなんだ」
と言いながらも、振り返してくる。

 ノートパソコンの向こうから武者小路が将臣に言う。

「どうでもいいが、半地下で人目がないからって。
 ここ来てくつろぐな、社長」

「なんだよ。
 ちょっと立ち寄っただけだろ。

 武者小路、また、今度、あの定食食べに行こう」

 将臣が此処に遊びに来ることに関して、ごちゃごちゃ言っていた武者小路だが。

 一緒にご飯を食べに行くことには乗り気なようで、あっさり、
「おう」
と言っていた。