社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「いるって知らないんだから、訊くわけないじゃないっ」
と二人は、そりゃそうですよねーというようなことを言い出した。

「……なんだこの不毛な会話」
という将臣の声がパーテーションの向こうから聞こえてくる。

 将臣と八十島は出先から帰ってきて、ちょっと休憩、と思い、此処に立ち寄ったのだと言う。

 社長がいるとなるとくつろげないだろうと思い、物陰にいたらしい。

 社長って大変だな。

 いや、変に社員に気を使う社長が大変なだけかもしれないが。

 そのとき、塩谷(しおたに)を従えた早蕨が女帝のように現れた。

 鋭い目つきでリラクゼーションルームを見回し、誰もリラックスできなくる。

 将臣と八十島まで凍りついていた。