社長っ、このタクシーは譲れませんっ!



「しかし、お前もスーツとか着て化粧してると、ちゃんとしたOLに見えるよな。
 悪い男に引っ掛かるなよ」

 そんな良紀の言葉に、うんっ、と千景が頷く。

「ところで、普段、仕事以外はなにしてるんだ?」

「仏を描いてるよ」

 誰もが引っ掛かるそこを良紀はスルーだった。

 幼い頃から千景を知っている良紀にとっては、そうかそうかで流せるところだった。

「あとは、会社の人たちとお菓子買いに行ったり、ランチに行ったり、ゲーセン行ったり」

「学生か」

「猫見たり、猫の写真を撮ったり……」

 そうかそうか、と微笑ましげに良紀は千景を見る。

「まだまだ千景は結婚とか遠そうだな」
と笑った良紀は、誰と、猫を見たり、写真を撮ったりしているのか訊くべきだった。