社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「社史編纂室にいるんだったか。
 まあ、腐らずに頑張れよ」

「なにも腐ってないよ。
 編纂室いいとこだよ」

「お前は何処でもいいとこだって言いそうだからな。
 半地下に追いやられてんだろ?」

 まだ頭を撫でながら、良紀は言う。

 千景はもういい大人なのだが、彼の中では、この従妹は永遠に小さき者のようだった。

「半地下、日焼けしなくていいよ。
 っていうか、地下だから悪いとかないよ。

 更に地下には仙人みたいな人が住んでるし。

 なんか地下に行くほど、ランクアップしてく気がするよ」

「……その理論で行くなら、最上階にいる社長は最下層の人間になるんだが」
と言われ、

 ……社長すみません、と千景は心の中で謝った。