『真実さんのこと、好きですか?
 私、実は社長のことが好きなんですけど』

 いや、……ないな。

 絶対こいつ、俺より、猫と駄菓子の方が好きだし。

 坂巻が聞いていたら、
「猫と駄菓子だけじゃなくて、キャベツもかもしれませんよ。
 社長よりハッキリ撮ってましたし」
と言っていたかもしれないが。

「いや、子どもの頃会ったきりだから、九条真実に特に思い入れはない」

「そうですか。
 ならいいんですが」
と言う千景はやはり、物憂げだ。

 九条真実が俺の許嫁であることが気になっているのか?

 俺はいつでもそんなもの破棄するが。

 いや、いつ、あいつが許嫁になったのかも知らないんだが……。

「なんだ、気になるじゃないか、言ってみろ」
と将臣は、はやる気持ちを抑えて、千景を急かす。

 何故はやっているのか、自分でもわからなかったのだが。