そんな理由なら教えてやらないと言ってやりたいっ、と思いながら、将臣は千景と連絡先を交換した。

 そして、せっかく交換したのだからと千景を夕食に誘った。

 二人であの商店街の古びた喫茶店を訪れる。

 またあのカタカナの多いメニューを眺め、千景はオムライス、自分はカレーを頼んだ。

「そういえば、坂巻さんが社史編纂室にはまだ他にメンバーがいるって言ってたんですけど。

 ご存じですか? 他のメンツ」

「いや、いる、とは前倉さんから聞いてはいるが……」

 だが、詳しくはない。

 大きな会社だ。
 会社全体のことを知るのは難しいし、社員全員を把握するのも難しい。

 できるだけ、みんなとコミュニケーションをとるようにはしているのだが。

「でも、全然姿見たことないんですよね。
 ……気配消してるんですかね?」

「忍者か。
 一度も見たことないんだろ?

 どんだけ気配消せてんだ」