「社長、連絡先を教えてください」
秘書室に用事で行ったら、たまたま将臣がいたので、千景はそう訊いてみた。
えっ? 今っ? という表情で塩谷がデスクから顔を上げ、将臣が動揺したように訊いてくる。
「お、俺の連絡先が知りたいのか。
何故だ?」
「いやそれが、なんで知らないのってみんなに言われるので」
「……それだけか」
「私の連絡先も教えますね」
交換してください、と千景は言った。
「よく考えたら、社員たるもの、いつでも社長の呼び出しに応じられるようでなければ駄目ですよね」
新入社員はやっぱりフットワークが軽くないと、と千景は言ったが、ちょうど秘書室に戻ってきた八十島が言う。
「……いや、普通の社員は社長にアドレス教えたり訊いたりしないからな」



