社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「八十島さんの筋肉のつき方がいいとか。
 あの冷たそうな目で、いつも人を見下しているのがいいとか。

 スーツの趣味も好みだとかいって付け狙ってたから、ちょうどよかったんでしょうね。

 ……そういえば、あの子、社長のことも狙ってたわ。

 社長と八十島さんをモデルに描く気かしら」

「なにを描くんですか?」

「……あなたは知らなくていい世界の話よ」

 どんな世界の話なんですか、と思ったとき、千景のスマホを見ていた坂巻が叫んだ。

「別にどの写真見てもいいって言うから見てたけど。
 なにこの、色気のない写真と謎写真のオンパレードはっ。

 ランチ、スイーツ、何処かのマンホール……

 なんで撮ってるのよ、こんなもの」

「なんかツボだったんで」

 どんなツボよ、と言ったあとで、坂巻は、

「評判の店のスイーツ、それに……

 あら、私と律子ね。
 よく撮れてるじゃない。

 あとで送って」
と言う。

 三人でランチしたときになんとなく撮った写真だ。