社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




「……また九条真実からだ」

 廊下を歩きながら、八十島は鳴ったばかりのスマホを見る。

 眉をひそめたとき、後ろから声がした。

「そういえば、最近、真実さん、八十島さんの話が多いんですよね~」

 千景が立っていた。

 こいつ、常に使いっ走りのようだな、といつも廊下をウロウロしている千景に思う。

「八十島さんも、真実さんとよく、恋愛ドラマのカップリング予想とかしてるんですか?」

「……俺がやるわけないだろう。
 俺が九条真実としているのは、主に社長の話だ」

 千景はスマホをチラと見、
「今もですか?」
と訊いてくる。

 俺が九条真実に、社長のことを色々流すのを快く思っていないのだろうか?

 愛か? 嵐山、と八十島は思う。

 千景はなにも考えずに、ふと訊いてみただけだったのだが。