社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「食べます?」
といろんな種類の駄菓子の入った大きなチャック付きのビニール袋を見せると、

「まだ持ってたのか」
と武者小路は言ってくるが。

「いえいえ。
 この間の一件で。

 ちょっとしたお菓子が引き出しにいつもあるのっていいなって思ったので、スーパーの駄菓子コーナーで買ってきたんです。

 最近、何処でも売ってますよね、駄菓子」
と言って、袋を見せると、吟味するように中を見ていた武者小路は、

「金払うから、大物もらっていいか」
と言い出した。

「お金なんていりませんよ。
 いつもお世話になってるんで、どうぞ」

 千景は、武者小路が欲しいという、だんごのように並んで串にささっている丸いカステラを渡した。

「この恩はいつか返そう」
とパソコンを打ちはじめながら武者小路が言うので。

 千景の中で、武者小路は、(はた)を織ったり、謎の壺をくれたり、御殿を建てたりしはじめた。

「……お前、せいぜい三、四十円くらいのものの対価になにを求めようとしている」
と千景の表情からその妄想を読んでか、武者小路が言ってくる。