社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 

 大きく重い玄関扉を閉め、ふう、と溜息をついたとき、なにかが脚にすりすりしているのに気がついた。

 ……猫だ。

 例の最後の一匹だ。

「お前、何処行ってた~っ」
と将臣はしゃがみ、その猫を抱える。

 にゃ~? と可愛いおめめで見つめてくる猫は、特になにも考えてはいないようだった。

 まあ……気まぐれだから猫なんだよな、と思いながら、ぐんにゃりあったかい猫を床に下ろす。

 たわむれに、
「伏せ」
と言ってみたが、なにもしない。

 しゃがんで、
「お前の前世は犬じゃないようだな」
と言いながら背を撫でていると、そのうち、猫はへそ天状態になり、ぐるぐる言いはじめた。

 将臣はガランと広い玄関で、お猫様の腹を撫でる。

 猫は、へそ天のまま幸せそうだった。

 その姿は見て、将臣は、ぷっと笑い、呟いた。

「……なんか千景みたいだな」