社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 それにしても。

 こうしてウロウロしているうちに、偶然、その辺から出て来たりしないかとこれだけ切望しているのに、やって来ないとはっ。

 ほんとうに、うちの猫なのか、あいつはっ。

 っていうか、そもそも、自分ちの猫に偶然さりげなく会いたいとか意味がわからないんだが、と思っているうちに玄関についてしまい、猫屋敷を出た。

 千景は振り返り振り返り、いつまでも猫との別れを惜しんでいる。

 ……俺との別れも惜しんでくれ、と思いながら、千景を送って夜道を歩いていたが。

 コンビニから出てきた、色白で小柄なおばさんを見て、千景が、あっ、と言う。

「大家さん」

「あら、千景ちゃん、こんばんは。
 彼氏?」
と大家のおばさんは、こちらを見て笑う。