社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 そこで、猫とたわむれていた千景がふいに顔を上げ、訊いてきた。

「そういえば、社長のアルバムとかないんですか?」

「アルバム?
 なんでだ?」

「いえ、小さい頃の社長もお可愛かったのでしょうね、とか思って」

 俺が小さい頃、お可愛かろうが、なかろうが、お前に関係あるのか、と思いながらも、ちょっと嬉しかった。

 だが、残念ながら、お可愛い俺の写真は此処にはない。

 将臣はそのことを千景に説明した。

「此処は実家じゃなくて、母の家だからない。

 あの母親が、
『おお、愛しい息子よ』とかってアルバムわざわざ持ってくるとか思うのか」

 そう言ったあとで、

 待てよ。
 ちょっとした写真くらいなら、マンションにあるな、と思い出した。