社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 ……いないじゃないか、何処行きやがった、と結局、最後の猫を見つけられず。

 一番ひんやりする北側の和室で二人でお茶を淹れて食べてしまう。

 千景は特に文句は言わなかったが。

 将臣の思い出のチーズケーキを絶賛したあとで、

「この部屋、この家で唯一、こたつが置けそうな場所ですね」
と言ってきたので、春とはいえ、やはり、寒かったのかも知れない。

「こたつ?
 ああ、そういうものがあるのは知っている」
と言って、

「入ったことないんですか? こたつ」
と驚かれた。

「ないな。
 此処にもうちのマンションにも、実家にも、じいさんちにも和室はあまりないから」

 好きなのか? こたつ、と訊くと、千景は満面の笑みを浮かべ、
「はい。
 猫がいて、こたつがあったら最高ですね」
と言う。

 ……お前にとっての最高なそこに、俺はいなくていいんだな、と思ったが。

 八十島も武者小路も特に必要とされていないようなので、まあ、いいか、と思う。