社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 相変わらず、大きな家だな。

 っていうか、まず、広い庭だな。

 タクシーを降りた千景は、将臣のあとについて玄関の階段を上りながら、振り返り、夜の庭園を眺めていた。

 猫のためなのか、防犯なのか。

 屋敷には誰もいないようだったが、屋敷にも庭にも煌々(こうこう)と灯りがついていた。

 少し声が反響する広い玄関ホールで、
「ただいま」
と将臣が言うと、猫たちが飛び出してくる。

 将臣だけではなく、千景の脚にも猫たちはまとわりついてきた。

 可愛いお目目で見つめる猫たちは実は、

「ごはん、ください」
「ごはん、ください」
「ごはん、ください」

 しか思っていないのかも知れないが、その愛らしさに千景は狂喜する。

 同じく猫にまみれている将臣は、キョロキョロなにかを探しているようだった。