社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「いらっしゃいませ~」
と白いエプロンをつけた若い女の人が笑顔で言ったとき、将臣が、あっ、と声を上げた。

 知り合いの女性だろうか。

 色が白くて小顔で、今風の可愛らしい人だな、と千景は思っていたが。

 将臣が見ていたのはショーケースの方だった。

 もうぽつぽつしか残っていないショーケースの中を覗き込み、将臣は叫ぶ。

「このケーキだっ」
「えっ?」

「幻の謎のチーズケーキだっ」

 可愛らしい店員さんは、

 えっ?
 普通のケーキなんですけどね、という顔で将臣を見ている。

 だが、将臣はシンプルなケーキが並ぶショーケースの中の白いチーズケーキを食い入るように眺めていた。