社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


 コーヒー豆が突っ込まれているだけではなかったコーヒーは金の縁取りの深い藍色のカップで出てきて。

 それを将臣が飲み終わり、店を出た。

「美味しかったですね」

「そうだな。
 また来よう」

 そんなことを語り合いながら商店街の端まで歩いてみる。

 角のケーキ屋さんの前で、千景は足を止めた。

「そうだ。
 早百合さんたちにケーキ買って行きたいんですけど」

「今日は誰もいないぞ」

 将臣はちょっと沈黙したあとで付け足してきた。

「……猫はいるぞ」

「そうですか」

 猫屋敷で二人きりになることは、特に気にならなかったので、そのままケーキ屋さんを眺めていた。

 将臣が、
「まあ、お前が食べたいのなら、買ってやろう」
と言い、店の名前が消えかけているガラス扉を押す。