社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 しばらくすると、将臣がやってきた。

 楽しいが見知らぬ商店街なので、社長とはいえ、知っている人を見ると、ホッとする。

「待ったか」

 いえいえ、それほどでも、と千景は笑う。

「会社の裏の方ってあんまり行ったことなかったので、面白かったですし」

 そうか、と言った将臣は日が落ちてきた短い商店街の通りを見回しながら、
「ここ、昔来たことがある気がするな」
と呟いていた。

 そんな二人のすぐ側に古い喫茶店があった。

 年代物のショーケースには色褪せた食品サンプルが並んでいるのだが。

 それが何故だか美味しそうに見える。