社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「お疲れ。
 なにやってんだ?」

「お疲れ様ですっ。
 しゃっ……」

 しまった。
 社長と待ち合わせしてて、と言うところだったっ。

 いや、言ってもいいんだが、なんとなく……と思いながら、千景はごまかそうとした。

「しゃ……しゃっくりが出るので、ずっと歩いてて。
 気がついたら、ここまで来てました」

「……止まっているようだが」

 歩いてたら止まるのか? しゃっくり、と言われる。

「えーと。
 ここまで来たら、昔懐かしいような商店街があったので、ショックで止まりまして」

 何故、商店街を見てショックで止まる?
という顔をしたあとで、武者小路は肩寄せ合うようにして立っている商店を見、

「まあ、見慣れない奴が見たら、物珍しいのか?」
とちょっと不思議そうに呟いていた。