社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 八十島が冷ややかに二人を見て言った。

「また二人仲良く出社とか。
 やはり、そういう関係だったんですね」

 その冷たい眼差しに、千景は慌てて弁解する。

「しゃ、社長の愛人は私ではないですっ」

 こらっ、という顔を将臣がした。

「紛らわしい言い方をするなっ。
 お前も愛人じゃないが、他にもいないっ。

 また遅れて、タクシーに乗ったら、こいつがたまたま先に乗ってただけだっ」

 社長めっ。
 拾ってあげた恩も忘れてっ、と千景が睨んだとき、八十島が、ふう、と溜息をつき、言ってきた。

「……タクシーってそういうものでしたっけ?

 ところで、私は今日は10時出社なのですが。
 お二人は、まだよろしいのですか?」

 はっ、としたように将臣が言う。

「い、急げ、嵐山っ」