社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 結局、千景は真実に怒られないよう、将臣のマンションは見なかった。

 月曜日、将臣がくれたお菓子の袋を手に会社に来た千景は、

「武者小路さん、お菓子ひとついかがですか?」
と駄菓子の入ったビニール袋を差し出してみる。

 武者小路はチラとこちらを見て、
「体型を見て、駄菓子が好きだと決めつけるな。

 ……だがまあ、もらおうか」
と言って手を出してきた。

 むくっとした感じの大きいが可愛らしい手だ。

 律子さんは痩せさせろって言うけど、このままでもいいのでは……となにかのキャラクターのような手を見て思ってしまう。

 肉球がありそうだ、と思いながら千景は言った。

「駄菓子屋さんとか、嫌いな人いませんよね」

「偏見だろ」

 そう言いながらも、武者小路は、

「これ、もらうぞ」
とコーラのラムネをとっていた。