社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「では、ありがとうございました、社長。
 嵐山さん、また月曜ね」

「はい、失礼致します」
と深々と頭を下げ、違和感なくタクシーに乗り込んだあとで千景は気づく。

「あれっ?
 社長、今日帰るの猫屋敷じゃないですよね?」

 朝一緒なことが多いので、なんとなく同じ方面だと思ってしまったが、違った。

「そういや、そうだな。
 まあいい。
 まず、お前んちに行け」

「でも、社長のうちの方が近かったりしないですか?」

「そうだが。
 別にいいぞ」

「いえいえ、どうぞお先に」
と譲り合ったが、将臣の家はこの近くのようだった。

 将臣のマンションに先に寄ってもらうようにしたあとで、千景は気づく。