社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 

 千景が勝ってゲームが終わり、みんなバラバラと帰りはじめた。

「楽しかったねー」
「なんかスッキリしたよー」

「……俺が負けたから、みんなスッキリしてるんじゃないだろうな」
と階段を下りながら将臣はいじけていた。

「私も負けましたよ」
と八十島が言ったとき、塩谷が手を挙げ彼を呼んだ。

「八十島さーん、帰り同じ方角ですよね。
 タクシー一緒に乗りましょう」

 早蕨たちが何台かタクシーを呼んでくれていたようだった。

 八十島は挨拶して行ってしまう。

「社長、嵐山さん、こっち」
と人を方角ごとに振り分けながらタクシーに乗せている早蕨が二人を同じタクシーに詰め込んだ。

 これで最後のようだ。

 乗ろうとしない早蕨に、
「早蕨さん、乗らないんですか?」
と千景が訊くと、

「旦那が迎えに来てるから」
と言う。

 早蕨が親指でクイッと指した先、ゲーセン下の駐車場にペコペコ頭を下げている小太りで人の良さそうな男性がいた。

 山のようなゲーセンの白い袋を持たされている。

 車の後ろに詰め込もうとしているところだったようだ。