社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 

「いやー、お金って稼ぐのは大変ですけど。
 使うのは一瞬ですね~」

 百円の一枚も載っていない手のひらを広げ、しみじみと言う千景を頼もしげに見ながら、早蕨が言う。

「社会人らしくなってきたわね、嵐山さん」

「……ゲーセンで散財している時点で、学生っぽい気がしますが」
と横で将臣が言っていた。

 千景たちは呑み屋近くの駐車場の二階にあるゲーセンに来ていた。

 別の店に呑みに行ったり、カラオケに行ったりした人たちも居るようだったが。

「私はいつも此処で酔いをさまして帰るのよ。
 子どもや旦那への土産もゲットできるしねっ」
と早蕨はぬいぐるみを三つ小脇に抱えて言う。

 可愛らしいそのぬいぐるみを見つめ、千景は訊いた。

「ご主人へのお土産はどれですか?」