社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 そりゃそうですよね~、と思いながら、千景が呑んでいると、早蕨は今度は八十島に勧め出した。

 こっちは部下なので、ほんとうに遠慮なく、わしの酒が呑めんのかっ、という勢いで勧めている。

「すみません。
 私、日本酒はちょっと……」
と嘘かほんとか言って、八十島は断ろうとしている。

「早蕨さん」
「なんだ、嵐山」

「八十島さんの酒も私がいただきましょうっ」

 その心意気やよしっ、とまた酒を注がれる。

 くいっ、と飲み干すと、早蕨が八十島に言った。

「出世させましょうっ、嵐山をっ」

「……私にその権限はありません」

 そうですよね~。

 早蕨さん、かなり酔ってますね……と思う千景に早蕨が、どん、と日本酒の瓶をガラステーブルに置いて言う。

「嵐山っ、このあと、ゲーセンで締めだ。
 ついて来い」

「はっ、早蕨さんっ」

 二人のやりとりを見ていた将臣が、
「……お前もう秘書に来たらどうだ? 嵐山」
と呟いていた。