社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「その(さかずき)、差し支えないのなら、私がいただきましょう」

「あら、社長をかばうの?
 愛ね」

 早蕨の横にいる塩谷も、
「愛ね」
と言って、ふふふと笑う。

「いえ、愛はありませんが、いただきましょう」

「こいつ、単に呑みたいだけですよ」

 愛と言われ、ちょっと照れたように将臣が言う。

「いえいえ、社長には、一宿一飯の……

 一宿はなかったですね。

 何飯かの恩義があるので」

「よし、気に入った。
 お菓子の嵐山。

 呑めっ」

 はっ、と千景はグラスに酒を注いでもらう。

 くいっ、と呑み干した。

 感心したように早蕨が、目の前で見ている将臣にわざわざ報告する。

「社長っ。
 嵐山、いい呑みっぷりです。
 出世させてやってくださいっ」

 出世させてやってくださいっ、と塩谷も復唱するように言う。

「……いや、そんなことでは出世させないぞ」