社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


「私、いつも八十島さんが、『社長付きの秘書です』って言うのを聞くたび、『社長好きの秘書です』って聞こえるんですよね~」

 暖色系のライトに照らされた洞窟のような雰囲気ある店内で、千景はそんなくだらぬ話をしていた。

「あの、音声で聞いたら、よくわからないんだけど。
 まあ、なんとなくわかるよ」

 はは……と笑いながら、営業の小西が言う。

 隣に座る小西は、ごく普通の好青年と言った感じだった。

 向かいの壁際の長いソファには将臣や早蕨たちが座っていた。

「おやおや、社長。
 もう呑まないんですか?」

 将臣が早蕨に絡まれている。

「……早蕨さん、相変わらず、ピッチ速いですね」
と将臣は早蕨に敬語だ。

 社内のことに詳しい早蕨に頭が上がらないのだろう。

 まあそうでなくとも、将臣は、自分より年上の人間には部下であろうとも敬語なのだが。