社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


 降りたあと、千景は二人に訊いてみた。

「なんで沈黙してたんです?」

「いや、また早蕨さんに吐くほど呑まされるのかと思って気が重くて……」
と将臣は言い、八十島は、

「……激しく揺れたので」
と言った。

 乗り物酔いする人だったようだ。

「外海に出た船に乗ってる気分でした……」
と呟いている。

 今の運転手さんも気のいい感じのおじさんだったが。

 いつもの運転手さんの穏やかな運転が恋しくなる。