社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 八十島に連れられて、カフェスペースに行き、カフェラテをもらう。

 片隅には、ソロキャンプ風のディスプレイなどもあって。

 見てくつろぐというより、仕事から逃げ出して、山奥に行きたくならないだろうか、と不安になる。

 なんとなく、その場の流れで、八十島と本物の木の下にあるカウンターテーブルで飲むこにとなった。

 ……なにも休まらないな、と思いはしたが、カフェラテは美味しかった。

 CDかなにかだろうが、鳥のさえずりまで聞こえてくる。

「そういえば、お前、社長を振ったんだってな」

 そういえばって話し出す内容ではないような……。

 千景はリラクゼーションルームに入るかどうか迷っていたときより、どきどきしながら、誰かに聞かれてはいないかと周囲を見回した。

「いや、振るもなにも。
 ちょうどいいから結婚しろとか意味がわからないですよ」

 そう訴えてみたのだが、八十島はちょっと考えたあとで、

「……『ちょうどいいから』か。
 でもまあ、意外と本気かもしれないよな」
と呟く。

「えっ?」