社長っ、このタクシーは譲れませんっ!



 


「いや、すまん。せっかく止まってくれたのに。
 上から涼しい顔で見下ろしやがってとか思ってしまって」
と将臣は謝ってきたが。

 ……そのセリフ、腹の中にとどめておいたら、わからなかったですけどね、と千景は思っていた。

「それにしても、お前、毎日タクシーで通勤とかどうなんだ?」

 ……さすがに毎日ではないですよ。

 そして、あなたに説教されたくはないですよ。

「会社の手前で降りますよ、タクシー。
 そういえば、毎度出会いますが、社長のおうちって、うちの近くなんですか?」
と訊いてみたが、将臣は沈黙する。

 ……訊いてはいけない話題だったのだろうか。

 はっ、と千景は気づく。